呼吸不全

この間夜勤中に患者さんが『苦しい、苦しい』って必死に訴えてきて、SpO₂も下がっちゃって。どうしたらいいか焦って頭真っ白になっちゃった…。先輩が助けてくれたから患者さんは助かったけど、怖かったよ~。

その場面は確かに焦るよね。『苦しい』とSpO₂の低下は患者さんからのサイン。このサインを見逃さずに適切な対応をできるようにしたいよね。まずは、呼吸不全の基本を一緒に振り返ってみよう!

解説記事で学べること!

呼吸不全の病態

呼吸不全とは、何らかの原因で「血液中の酸素の量(酸素分圧)」が60mmHg未満になってしまった状態のこと。

通常、動脈血にはおよそ100mmHgの酸素が含まれていて、赤血球の「ヘモグロビン」にくっついて体中の細胞に酸素を運んでいるよ。しかし、60mmHgを下回ると、臓器や組織に酸素が十分届かず、さまざまな障害が起こってくるんだ。

呼吸不全の原因は4つの要素に分けられるよ。

呼吸不全の四要素は、「肺」「換気」「血液」「組織」のうち、どこで呼吸不全のトラブルが起こっているかを分類するもの。呼吸不全には、急激に悪化する「急性呼吸不全」と、ゆっくり進行する「慢性呼吸不全」の2つのタイプがあるよ。

急性呼吸不全は、数時間から数日という短い期間で急に呼吸状態が悪化する状態。原因としては、肺炎やARDS(急性呼吸促迫症候群)自然気胸、肺血栓塞栓症などが挙げられる。こうした病態では、急に酸素の取り込みが難しくなって、呼吸困難や意識障害が見られることもあり、迅速な観察と対応が求められるよ。

一方で、慢性呼吸不全は、1か月以上にわたって呼吸機能が低下している状態を指す。慢性閉塞性肺疾患(COPD)や間質性肺炎、肺結核の後遺症などが主な原因だよ。症状が徐々に進行するから、自覚症状がないことも少なくない。でも、風邪や心不全など他の病気をきっかけに急激に悪化すること(急性増悪)もあるから注意が必要だよ。

このように、呼吸不全は進行のスピードによって急性と慢性に分けられるけど、さらに血液中のガスの状態に着目すると、4つの原因に分類され、さらに「Ⅰ型呼吸不全」と「Ⅱ型呼吸不全」に分類することができる!

低酸素血症が起こる4要因は以下のとおり。

スクロールできます
肺胞低換気十分なガス交換が行えるだけの肺換気量がないPaCO₂>45mmHg
A₋aDO₂正常
Ⅱ型呼吸不全
換気血流比不均等
(VQミスマッチ)
肺換気量と血流比のバランスが崩れているPaCO₂≦45mmH
A₋aDO₂開大
Ⅰ型呼吸不全
拡散障害肺胞気から赤血球までの酸素の拡散過程に何らかの障害がある
シャント
(左右シャント)
右室から拍出された血液が、肺胞気に接触されず、酸素化されずに左心系に流入している

※PaCO₂:動脈血二酸化炭素分圧
※A₋aDO₂:肺胞気-動脈血酸素分圧較差

低酸素血症が起こる4要因は、肺の中の酸素の取り込みが悪い理由をみるもの。

前に説明した呼吸不全の4要因は、体全体の酸素供給のプロセスを分類したもの、一方で、低酸素血症の4要因は、肺で酸素が血液に入る過程(ガス交換)を分類したものになるよ。

Ⅰ型呼吸不全

Ⅰ型呼吸不全とは、動脈血中の酸素分圧(PaO₂)が60mmHg未満で、動脈血二酸化炭素分圧(PaCO₂)は正常または低下している状態。「換気血流比不均等」「拡散障害」「シャント」のいずれかに問題が生じて、肺そのものに何らかの障害がある状態で、酸素を血液に取り込む力が弱くなっていると考えられるよ。

原因としては、ARDS(急性呼吸促迫症候群)や肺炎、間質性肺炎などが代表的。

酸素の取り込みが悪くても、二酸化炭素の排出はある程度保たれているため、PaCO₂の上昇は見られないよ。

ARDSとは?

急性呼吸促迫症候群(ARDS:Acute Respiratory Distress Syndrome)は、以下の4つの特徴を持つ重症度の高い急性の呼吸不全のこと。

  • 発症から1週間以内
  • 明らかな低酸素血症
  • 画像(レントゲン・CT)で両肺に異常な影
  • 心不全による肺水腫ではない

肺炎や敗血症といった他の疾患から引き起こされるから、診断が難しく、他の疾患と見分ける必要があるよ。

Ⅱ型呼吸不全

Ⅱ型呼吸不全は、動脈血中の酸素分圧(PaO₂)が60mmHg未満、かつ二酸化炭素分圧(PaCO₂)が45mmHgを超える「肺胞低換気」の状態。このタイプは、肺だけでなく、呼吸筋や神経系の働きが低下し、呼吸そのものが十分に行えなくなることが主な原因だよ。

ALSや神経・筋疾患、薬物の影響、COPDの進行などが代表的な原因疾患。呼吸の出し入れ自体がうまくできないから、酸素不足に加えて高二酸化炭素血症も起こる点がⅠ型との大きな違いになるよ。

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呼吸不全の症状

呼吸不全の症状は、急性・慢性により異なる。さらに、重症度によっても表れる症状は違い、基礎疾患を踏まえたアセスメントが重要だよ。

急性呼吸不全

急性呼吸不全では、酸素が足りない「低酸素血症」と、二酸化炭素がたまりすぎる「高炭酸ガス血症」によって、身体にさまざまな症状が現れるよ。

酸素分圧(PaO₂)が低下すると、以下のような症状が見られる。

  • PaO₂が60mmHg未満:頻呼吸や頻脈などの呼吸窮迫
  • PaO₂が40mmHg未満:チアノーゼ、見当識障害、興奮
  • PaO₂が30mmHg未満:意識消失
  • PaO₂が20mmHg未満:徐脈、ショック、昏睡

また、二酸化炭素分圧(PaCO₂)の上昇によっても以下のような症状が進行するよ。

  • 基礎値より+10mmHg:発汗、血圧上昇、手のぬくもり
  • +20mmHg:傾眠、羽ばたき振戦
  • +30mmHg:昏睡、縮瞳、CO₂ナルコーシス

こうした症状が進行すると、意識レベルの低下やショックなど、命に関わる状態に至るため、観察と対応がとても重要なんだ。

慢性呼吸不全

慢性呼吸不全の初期は、自覚症状が少なく気づかないまま過ごしてしまうこともある。特に酸素不足による症状としては、労作時の息切れやチアノーゼなどが見られるんだけど、日常生活に大きな影響が出るまでは症状が目立たないこともあるんだ。

また、二酸化炭素がたまっていても、代償機能が働くことで、体はその状態に慣れてしまう。腎臓が体の中のpHを調整するため、すぐには症状が出にくいんだよ。

だから、本人も周囲も呼吸の異常に気づかないまま経過することもしばしば。ただし、この状態は表面上落ち着いて見えても、体には負担がかかっていて、急激に症状が悪化するケースも少なくないよ。

呼吸不全の検査

呼吸不全の評価には、原因の特定や重症度の把握、治療方針の決定に役立つさまざまな検査があるよ。ここでは代表的な検査方法を紹介していくね。

血液ガス分析

呼吸状態を把握する上で欠かせないのが動脈血液ガス検査。この検査では、血液の酸素化能や換気の状態、代謝機能の評価ができる。どのタイプの呼吸不全なのかが分からないと、適切な治療ができないどころか、悪化させてしまうリスクがあるんだ・・・。特に注目すべき項目は以下のとおり。

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